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| ※本文7P〜14P抜粋 「遅い!」 キングとエデンが散歩に出かけて三時間が経った。 「遅すぎる!!」 リビングのテーブルには三時のおやつとして作った、フルーツロールケーキを中央にケーキ皿とフォークが用意されていた。 「紅茶の用意もできて準備万端なのに」 何処で道草を食っているのか、と溜息を吐いた。 その時。 「ママ」 呼ばれて振り向けば、金の髪に黒の瞳を持つ愛娘・マリアが歩み寄ってきた。 「ん?どうした。マリア」 「じぇんわ」 マリアを抱き上げて問えば、笑顔で返してきた。 じぇんわ? ああ。 「電話か」 誰からだろ。 マリアを両手にエドワードは電話機に足を向けて。 「もしもし」 受話器を耳にあてれば。 『エドワードちゃん』 帰りを待ちわびていた主の声が鼓膜を叩いた。 「キング義父さん!今何処にいるんだ」 『ホテルだよ』 「ホテル?!どうして」 『実は散歩途中で子供を助けてね』 「子供を?」 『ああ、外傷はないからホテルに連れて来たんだよ』 「警察には?」 『いや、知らせていない』 「え?」 『実はね。知っている子なんだよ』 「知っている子?」 エデンとマリア以外に? あ、エリシア! だったら、こっちに連れてくるだろうし………。 ここに連れて来られない子供って………あ!もしかして。 「隠し子!」 『?!』 「キング義父さん、黙っているなんて水臭いぜ」 『エドワードちゃん!違うから!!』 「え?違うの」 『違う!私の実子は先にも後にもロイだけだ』 断言するキングにエドワードは失笑した。 「それじゃ」 『エドワードちゃん』 「はい」 『エデンも此方にいる』 「あ、はい」 『迎えついでにすまないが、料理を作ってきてくれないか』 「料理を?」 『私もエデンも小腹が空いている。それに』 「それに?」 『助けた子供が先ほどからお腹をグーグー鳴らせてね』 「それは―………」 『今は寝ているんだが、起きたらホテルの料理よりも、エドワードちゃんの美味しい料理を食べさせてやりたくてな』 その言葉にエドワードは笑いを噴出して。 「了解!」 『頼むよ』 電話が切れたことを確認してから、エドワードは受話器を置いた。 「じーじとにーたんは?」 腕に抱いていたマリアが小さく首を傾げて問うてきた。 「ホテルにいるよ」 「ほてる?」 「そう、ホテルだ。今からママは料理を作らないといけないからマリアはラストと一緒におやつを食べておいで」 「え〜〜〜」 不満を訴える顔に、エドワードはごめんなと謝って額に口付け、床に下ろした。 「ラスト」 「はい」 傍に控えていたラストが一歩前に出た。 「すまないが、マリアと一緒におやつを食べてくれないか」 「わかりました。マリア様」 行きましょう、と手を差し出した。 マリアはラストに視線を向けてから、エドワードに向き直り、ヒシッと足に縋りついた。 「ママ〜〜〜」 「エデン………」 「いっちょ〜〜〜」 グリグリと額を足に擦りつけるマリアにエドワードとラストは苦笑を漏らす。 「奥様、キッチンで料理を作りながら、おやつを一緒に摂られては如何ですか」 「そうだな」 ラストの案に頷いて、エドワードはマリアを抱き上げ、額をコツンと当てて。 「マリア、オレと一緒だとキッチンでおやつになるけどいいか?」 愛しい人と同じ瞳の色を覗き込みながら問えば、マリアは潤ませた瞳をそのまま、満面の笑顔を見せて。 「うん!」 ママといっちょ〜〜〜と喜びを露にして柔らかい両腕が首に回った。 「ラストも一緒にどうだ」 「お言葉に甘えて」 笑みを浮かべて頷くラストと共にエドワードはリビングに入り、マリアを下ろしてテーブルに置かれていたケーキを乗せた皿を両手にキッチンに足を向けた。 「そういえば、今日は旦那様が早く帰れると言っていませんでしたか?」 玄関ホールを横切ってキッチンに足を踏み込んだところで、ラストが朝見送った光景を思い出しながら言った。 「ああ、そうだったな」 「でしたら、旦那様と一緒にキング様のもとに行かれては?」 一緒に出かけるのも久しぶりでしょう、と言うラストに確かにと小さく頷いて。 「でも、アイツはここ最近忙しそうだったから、休ませないと」 「お気持ちはわかりますが、奥様が不在では休めるものも休めないのでは?」 その言葉にエドワードは言葉を詰まらせた。 そ、そうだ。 疲労困憊のロイには必要不可欠なものがある。 それが無ければ、安らげないし癒されない。 そのモノとは。 オレ、だ。 いつだったか。 甘えるようにロイがオレの胸に顔を埋めて。 『エディが傍にいなければ、疲れが癒されない。心が安らげない』 腰にギュッと両腕を回して言ったことがあった。 あの時は心身ともに疲労していて、こういっちゃなんだが。 「可愛かったな〜」 「奥様」 「だってさ。あのロイがだぜ。オレの胸に顔を埋めて甘える姿は大型犬のような愛らしさで、ああ、可愛すぎるぜ!ロイ〜〜〜!!」 「奥様………」 エドワードは頬を染めながら、自分自身を両腕で抱きしめ、その姿を眺めているラストは呆れたような顔を向けた。 「旦那様を愛しているのは重々承知しておりますので、独り身の私に惚気ないでください」 「え、あ、ごめん」 照れた顔で謝罪するエドワードにラストは溜息を吐いて。 「それで如何なされますか」 「そうだな。ロイに聞いてみるよ」 キッチンテーブルにケーキ皿を置き、エドワードはマリアを子供椅子に座らせてから小皿に切り分けたフルーツロールケーキをいれて、フォークを添えてマリアの前に置いた。 「はいお待たせ。マリア」 「ちゃべていい?」 「ああ、いいぞ。だが、その前にすることがあるだろ」 そうエドワードが言えば、マリアは両手を合わせて。 「いちゃらきます」 「はい。よく出来ました」 クシャリと金の髪を撫でれば、声を上げて喜びマリアはフォークを手にとった。 「ラストも」 「いただきます」 マリアの横に座り、ラストはケーキが乗った皿を手前に置いてフォークを手にした。 ケーキを頬張って。 「どう?」 「美味しいです」 「よっしゃ!あ、甘くは?」 「ありませんよ」 「じゃロイもいけるよな」 「はい」 きっと甘くても食べてくれるだろうが、とラストは胸中で呟きながら頷いた。 「よっし。それじゃ作るか。あ、ラスト、マリアを見ていてくれるか」 「その為にお誘いくださったのでは?」 「あ〜半分は。でも、ケーキも食べて欲しかったのも本音だぞ!」 「はいはい」 わかっていますよ、と微笑みながら答えるラストにエドワードは本当だぞと念を押してから、腕を捲り上げた。 「よっし。作るぞ!」 冷蔵庫を開けて、材料を取り出しまな板と包丁、フライパンを取り出した。 その背中を眺めて、ラストは隣に座るマリアに顔を向けた。 そこには幸せな笑顔でケーキを頬張る小さな姫にラストは頬を緩めて。 「美味しいですか?マリア様」 「おいちー」 口の周りにクリームをつけて答えるマリア。 こうして見てみると小さい頃のエドワード様を思い出すわ。 こうやって口の周りにクリームをつけて、大奥様の作ったケーキを美味しそうに頬張っていたわね。 「マリア様、お口を拭きましょうね」 傍に置いてあった手拭いでマリアの口元を拭えば、ギュと目を瞑り、身を任せる。 ラストは小さく笑って。 「本当にエドワード様とそっくり」 「?」 キョトンと見上げるマリアの後頭部を撫でて。 「お母様にそっくりと言ったのです」 「お、おかーしゃま?」 「マリア様のママのことです」 「ママ」 「そうです。マリア様を見ていると、小さい頃のエドワード様を思い出します」 「?」 ラストの言葉が理解できないのだろう。 マリアは?マークを頭上に飛ばして首を傾げた。 そんな少女にラストは苦笑して。 「マリア様には少し早すぎましたね。さ、まだケーキが残っていますよ」 ラストがケーキに視線を向ければ、取っちゃ駄目とケーキを両腕で囲み、マリアは急いで食べ始めた。 「取りませんから、ゆっくり食べてください」 ラストは小さく笑って自分の前に置かれているケーキにフォークを刺した。 二人がそんなやり取りをしている間、エドワードは楽しそうにキッチンを駆け回っていた。 キング義父さんとエデン。 助けた子供の分とマリア。 そして。 ロイの分。 フフ、大切な人に作る料理は本当に楽しい。 「あ、ロイに連絡をしなきゃ」 何時に帰ってくるのか聞かなきゃな。 「ラスト、ロイに電話をしてくる」 「はい」 手をタオルで拭い、エドワードはキッチンを出た。 玄関ホールを横切り、リビングの扉を開けて左側に設置されている電話に足を向けた。 受話器を片手にダイヤルを回せば、コール二回で繋がった。 『私だ』 「私って誰だよ」 『エディ!珍しいじゃないか。キミが電話を掛けてくるなんて』 「まーな。仕事、頑張っているか?」 『ああ、頑張っているよ。一分一秒でもキミの顔を見たくてね』 「っつ」 ロイの言葉にエドワードは顔を真っ赤にして。 「ば、ばか」 『フフ、本当のことだよ』 「ロイ」 『そうそう、朝にも言ったが、今夜は早く帰れそうだ。久しぶりに外食をしようか』 「あ、うん。そのことなんだけど」 『?』 「キング義父さんから電話があってさ。エデンとの散歩途中で子供を助けたんだって」 『子供を?』 「うん。何でもキング義父さんと顔見知りとかで、今はホテルにいるんだ」 『エデンは?』 「エデンも一緒」 『………そうか』 「でさ。助けた子供がどうやらお腹を空かせているらしくて、キング義父さんがオレの手料理を食べさせてやりたいって言ってくれたから、今作っているんだ。それで出来たら持って行くことになっているんだけど」 『私も行くぞ』 エドワードの言葉を遮り、ロイはキッパリと言い切った。 「で、でも、ここ最近忙しくて疲れているだろ」 『エディがいないのに、休むも無いだろ』 「ロイ」 『行くからな』 「………どうしても?」 『エディが行かないなら、私も行かない』 駄々を捏ねる子供のような言葉に、エドワードは苦笑を漏らした。 嬉しいやら。 恥かしいやら。 「わかった。じゃ一緒に行こう」 『ハボックを伴って帰るから、車でホテルまで行こう』 「え、でも」 『アイツのことは気にするな』 いやいやいや、するだろ! 胸中で突っ込みながらもエドワードは小さく笑った。 ハボックはずっとロイを支えてきた一人だ。 大総統の地位に着任し、色々と周りが騒がしい中、古株だけに気が許せるのだろう。 気持ちは分かるが。 「デートの邪魔はしてやるなよ」 『しないよ。そこまで非道ではないさ』 「その前に殺されるぞ」 『………銃弾は浴びたくないね』 「浴びたくなかったら、余り無茶を頼むなよ」 『了解した』 「で、何時に帰ってくるんだ?」 『定時には』 「了解。じゃ今夜の夕食はキング義父さんのホテルの部屋で」 『仕方ないね』 「足りるようには作るけど、もし足りなかったらルームサービスを頼んでもいいし」 『足りるように作ってくれ』 「え?」 『エディの料理の後にホテルの料理は美味しいけど、味気ないからね』 「ロイ」 『だから頼むよ。奥さん』 クスクスと楽しそうに笑って言うロイに、エドワードは頬を緩めて。 「しかたねーなー。作ってやるからしっかり食べろよ」 『もちろん』 キミの手料理を残すことなんてしたかい、と言われてエドワードは失言でした、と舌を出した。 「じゃ待ってるから」 『早く帰るよ』 「仕事は終わらせてこいよ」 『わかっているよ。ではな』 「ん」 電話が切れて、エドワードは受話器を電話機に戻した。 「なんだか」 声を聞いたら、会いたくなっちゃった。 「早く、帰ってこいよ。ロイ」 そう呟きを落としてから、エドワードはパンと両頬を叩いて。 「オレも頑張るからな!」 ムンと気合いをいれてエドワードはリビングを出た。 〜続きはオフにて〜 |