表紙・ゆずは様











□ 焔竜の恋情 □











     01

「頑なだ」
「は?」

 何よ。
 突然、とウィンリィが怪訝な顔で聞いてきた。
 場所はウィンリィの仕事場。
 壁際に置かれているソファに腰を下ろし、エドワードは暗雲を漂わせていた。

「もう、鬱陶しいわね。ロイはどうしたの?」
「家でケーキを焼いてる」
「そ」
「うん」
「それで、アンタはここで何をやっているのよ」
「別に」

 ちょっとした。

「息抜き」
「息抜き?」

 そうは見えないけど。
 どっちかっていうと。

「落ち込み中って感じだけど?」

 ウィンリィの言葉に、エドワードは更に落ち込んだ。
 どうやら、ビンゴらしい。

「ああ、もう!本当に鬱陶しいわね。どうしたのよ」
「ロイが」
「ロイが?」
「頑ななんだ」
「それはさっき聞いたわよ。原因はなに?」

 主語を述べなさい。

「だ、だから、アレだよ!」
「アレでわかるわけがないじゃない」
「ヴッ」
「ヴ、じゃない。ちゃっちゃと言う!」

 スパナを振り回しながら、ウィンリィが怒鳴ると、エドワードは怯えながら。

「前にさ。言っただろ」
「?」
「ロイのことが好きなんだろって」
「………言った?」
「言ったよ!」

 その言葉で。

「オレは自分の気持ちに気づいたんだから」
「そう、で?」
「でって」
「好きになったって、年の差でアウトでしょう」

 というか、

「相手にしてくれないわよ」

 アンタの方が年上なのよ。
 年増が好きならば、見込みはあるだろうけど。

「そ、それでも、好きなんだもん」
「はいはい」
「はいはいって、真面目に聞いてないだろ!」
「聞いているわよ」

 それなりに。
 整備をしながら言うウィンリィに、エドワードは口唇を尖がらせて。

「もういい」

 立ち上がり、作業部屋を出た。

「何だよ。ウィンリィの奴」

 こっちは本気だっていうのに。
 本気で、どうやって落とせばいいのか悩んでいるのに。

「はぁ」

 溜息を吐いて、エドワードは外に出た。
 ワンワン、とデンが駆け寄ってくる。
 デンを受け止めて、エドワードは芝生に横たわり、青い空を見上げた。
 白く雲がゆっくりと流れていく。
 ロイに告白をして三ヶ月が経った。
 何も代わらない日常。
 意識をしてなければ。
 抱きついても、子供をあやすように宥めて離す。

「オレって魅力ない?」

 ううう、と唸っていると。

「何が魅力ないって?」
「ばっちゃん」
「そんなところで寝転がっていると、デンのおもちゃになるよ」
「もうなっているよ」

 先ほどから、顔をベロベロと舐められて、唾液だらけだ。
 ピナコは煙管を口に銜えて。

「それで、何を悩んでいるんだい?」
「ん、ん〜〜〜」

 実は、さ。

「ロイのことが好きになったんだ」

 一人の男として、と言えば、ピナコは目を見張って。

「馬鹿だね」
「え?」
「もう知っていると思うが、ロイは人間じゃないんだよ」
「うん」
「寿命も違う。その上、ロイは人間とは一線を引いている」

 自分の懐に入れこめないように、対応している節がある。

「ま、トリシャは別だったが」
「………」
「エドはトリシャの娘だからね。ロイの懐に入り込めたんだよ」
「!」

 母さんの娘だから………。
 そんなこと、わかっている。
 分かっているけど。
 それでも。

「好きなんだ」

 ロイが。
 顔に両手を覆い、エドワードは叫んだ。
 好きなんだ、と。

「本気なんだね」
「うん」
「全く、見る目があると褒めるべきか、無謀だと言うべきか」

 やれやれ、とピナコは煙管を吸い、煙を吐いた。

「頑張りな」

 それだけを言い残し、ピナコは家に入っていった。
 エドワードは青い空を見上げて。

「頑張る」

 小さな声で呟きを落とした。





   〜続きはオフにて〜