□ 見守る影 1 □










 雪がとけて春の訪れを草花と鳥たちが報せる中、金の長髪と瞳を持つ青年、エドワード・エルリック(18)は東部の田舎町リゼンブールから父方の遠縁にあたる親戚がいるセントラルへ向かっていた。

「たく、何でオレが行かなきゃいけねーんだよ」

 汽車に揺られて剥れた顔で窓の外を眺め怒気が入った声色で呟いた。





 事の起りは二時間前。





「と、いうわけでエド悪いがセントラルへ行ってきてくれ」
「な〜〜〜にがと、いうわけで、だ!このクソ親父!!」

 文献を片手に突然入ってきた父親であるホーエンハイムは爽やかな笑顔で言った。

「主語が抜けてるんだよ!」
「おお!そうだったな。実は遠縁にあたる私の親戚が優秀な錬金術師を探していてな」
「で?」
「しかも直ぐに使い物になる奴がいるらしい」
「で?」
「セントラルへ行って来い」

 命令形の台詞にエドワードは頬を引きつらせて。

「オレの意見は無しかよ」
「どうせ暇だろう?家で文献を読み漁ってるぐらいなら人の役にたつことをしてきなさい」
「してきなさいってオレは昨日大学が春休みになって帰省したばかりだっつーの!」
「ああ、学校だがな。始まったら寮に戻るらなくていい。その遠縁の家から通いなさい」
「は?!」
「仕事と勉学の両立!いい響きではないか!!」
「何処がだ!!」
「これは既に決定事項だ。大学にも言ってある」
「な!!」
「ほら、ボケッとしてないでさっさと荷物をまとめなさい。今から二時間後の汽車に乗らなくてはいけないのだから」
「なに?!!」
「叫ぶ前に手を動かせ。三十分後には仕度を済ませておきなさい」

 言うだけ言ってホーエンハイムはエドワードの部屋を後にした。
 父の背中を見送って震える拳を壁へ繰り出して。


「ざっけんなーーーーー!クソ親父!!!!」


 町中に轟いたであろうエドワードの叫びを聞いてホーエンハイムは楽しそうに微笑んだ。
 そんなこんなで荷物をまとめ汽車へ放り込まれて現在に至るわけだ。

「たく、セントラルに親戚がいるなんて聞いてねーぞ」

 父一人子一人のはずなのに・・・・なんで今頃になって親戚が現れたんだ?

 母親は・・・・エドワードを生むと直ぐに逝ってしまった。
 医者は降ろせば生きながらえると言っていたそうだ。
 だが。
 母であるトリシャは微笑んでそれを拒否した。

『折角この世に命を授かったんだもの。外の世界を見せて触れさせてあげたいわ。ね、あなた』

 辛いだろうに笑みを絶やさずトリシャはそう言い張った。
 ホーエンハイムも辛い立場に立たされながらもトリシャの意見を尊重した。

 そして。

 エドワードを生んで気力を使い果たしたトリシャは天に召された。
 その日からホーエンハイムは父であり母の温もりをエドワードへ存分に注いだ。
 それを知っているからこそエドワードは父の命には逆らえないのである。

 親戚・・・・か。
 一体どんな奴なんだろう。
 ・・・・錬金術の使い手を欲するとなると・・・・軍関係かな。
 つか、それしかないな。
 軍関係ね〜。
 親父にそんな親戚いたのか?
 っていうか。
 錬金術だったら親父の方が長けているんだから行けばいいのに・・・・ってもう年か。
 ま、いいや。
 着けばわかるだろう。

 大きな欠伸を一つしてエドワードは横になった。
 十八とはいえ通常よりは成長が遅れており、一目みたら十四、五に間違う程である。
 ・・・・そういうことを本人に直接言えばボコられることは間違いないので秘密だ。





 それから丸一日かけてセントラルへ着いたエドワードの目の前には軍人が二名立っていた。
 
 あ〜〜〜やっぱりビンゴか。
 
「エドワード・エルリック様ですか?」
「そうですけど」
「初めまして、リザ・ホークアイです。地位は大尉。宜しくね」

 金の長髪を後ろに纏め上げバレッタで止め美人でなんとも凛々しい女性は敬礼し右手を差し出す。

「初めまして、エドワード・エルリックです」

 握手をしてエドワードは男に視線を向けた。

「初めまして、オレはジャン・ハボック。地位は中尉だ。宜しく」

 タバコを銜えて敬礼する長身の男性はニカッと笑って右手を差し出す。

「宜しく」
「今、本当に軍人か?って思っただろ」

 素直に頷くとハボックはあ〜やっぱりと笑って。

「良く言われる。軍人さんらしくないってな」
「ではもう少し軍人らしくしてください」
「ハハハ〜大尉は厳しいっすね〜」
「本当のことを言ったまでです。それでは行きましょうか。少将がお待ちです」
「少将?」
「この度、エドワード君を呼ばれた張本人です」

 この年で『君』と呼ばれるとは思わなかった。

「ロイ・マスタング少将。もう直ぐ中央司令部から大総統府へ異動といまや若手のエリート道まっしぐらのお人さ」
「ふ〜ん、で、その人が錬金術師に何の用?」
「「錬金術師?」」

 エドワードの問いに二人は一斉に振り返り。

「錬金術を使えるのか?」
「え、ああ、まぁ・・・・それなりに」
「そう、それで納得したわ」
「へ?」
「うんうん、オレもやっとわかった。例のアレをコイツにやらせるつもりなんですね」
「きっとね」
「え、え、え?どういうこと」

 訳がわからないといわんばかりに慌てるエドワードに二人は微笑んで。

「では行きますか。姫」

 ひ、姫?!!

 固まっているエドワードの金髪にホークアイが指で梳き。

「長い髪に白い肌、これはいけるわ」
「そうっすか?」

 ハボックが繁々とエドワードを見詰めてからホークアイへ向き直り納得いかない顔を見せる。

 一体、二人で何の話をしているんだ??

「さ、行きましょうか。少将が首を長くして待っているわ」
「そっすね。では姫」
「だ〜〜〜れが姫だ!!」
「誰ってエド」

 当然とばかりに答えるハボックに青筋をたてて。

「オレは男だ!」
「「そんなの見たらわかる」わ」
「じゃなんで姫なんだよ!」
「「行けばわかる」わ」

 二人ははもりながら答え、エドワードを駅の外へと促した。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!一体ナニがあるんだよ」
「それは全て少将から聞いてくれ」

 すまんなと付け足しハボックはエドワードの背中を軽く押すと体勢が崩れるや否や、目前の黒い車の後部座席へ崩れるように乗った。
 素早くホークアイがドアを閉めて。

「では帰還します」
「Yes.sir」

 金の猫を捕獲した二人の軍人は中央司令部、ロイ・マスタング少将の元へ向かった。










 車から降ろされ見上げた先は見たことも無い大きな建物が建っていた。

「デカ」
「ここが中央司令部よ」
「ウへ〜〜〜」
「これで驚くなよ。大総統府はもっとデカイぞ」
「うえ?!」

 驚愕するエドワードに二人は苦笑して。

「さ、行きましょうか」

 ホークアイが先頭を歩きその後にエドワードとハボックが続き、三人は少将の執務室へ向かった。





 執務室に着いてハボックが「オレはここで失礼します」とホークアイへ敬礼し去っていくと同時に。

「少将、連れてまいりました」

 ホークアイが重厚なドアへノックした。

「入れ」
「失礼します」

 ドアが開いた先には無駄に大きなデスク。
 その前には漆黒の髪と冷めた鋭い刃のような瞳を持ち青い軍服を身に纏い、両手には白い手袋を嵌めた男性が座っていた。

 こいつがロイ・マスタング。
 ふ〜ん、流石に少将ってことだけはあるな。
 隙がない上に一癖も二癖もありそうだ。

「ご苦労、ホークアイ大尉」
「いえ、飲み物をお持ちしましょうか?」
「いや、彼と二人にして欲しい。必要な時はこちらから呼ぶ」
「Yes,sir」

 ホークアイは敬礼し執務室を後にした。
 ロイは数枚の書類を片手に目の前にいる青年ことエドワードへ視線を向けて。

「エドワード・エルリック。年は十八。セントラル医学生で成績はトップクラス。錬金術は『錬金術の師』と言われる父―ホーエンハイム・エルリックから学び今や国家錬金術師に引けは取らない、か。稀に見る優秀な逸材だな」

 逸材ってオレは物か?!

「で、その逸材に何の用だ」
「年上に向かってその口調かい」
「口をきいてやっているだけマシだと思え!」

 両腕を前で組みロイを睨みつけるエドワードに胸中で嘆息し、再度彼を見詰めなおした。

 金の髪に意思の強い瞳。
 年の割には小さいが、大きくなったもんだ。
 あの赤ん坊が・・・・。

 ロイは嬉しさを噛み締めながらもそれを表に微塵も出さずに用件を口にした。

「では用件を言おう。これから一年間、私の傍にいたまえ」
「は?」
「あと服装は女性のものを着用すること」
「ちょ」
「私のことは階級ではなく名で呼ぶように」
「ちょっっっと待て!!」

 デスクに身を乗り出しロイの口を両手で塞ぐ。

「なに突拍子もないことをいってるんだ!」
「何ってキミを呼んだ要件を言っているだけだが?」

 エドワードの手を退かせてニヤリと笑うロイに頬を引きつらせて。

「オレに『女装』をさせる為にわざわざリゼンブールから呼び寄せたのか?!」
「まさか、それだけではないよ」
「じゃなんだよ!」
「いずれわかるさ」
「いずれじゃなく今話せ!」

 青筋を二、三本たて怒りを露にするエドワードへロイは微笑し。

「今回、キミの役目は私の婚約者で警護だ」

 話を逸らしたロイに怒りを覚えたもののエドワードは耳に入った言葉に思考が止まった。

 今・・・・何て言った?
 婚約者だと?!!

 フリーズしているエドワードを横目にロイは言葉を紡いだ。

「このことはエルリック氏もご存知だよ。彼は快く引き受けてくれた」
「親父が引き受けてもオレが引き受けなきゃ無意味だろ!」
「キミは父親には逆らえない」
「!」

 ロイは目を細めて。

「違うかい?」

 確信を持った口調で言った。

 こいつ・・・・。

「それと私のことは少将ではなく『ロイ』と呼びたまえ」
「じょ、冗談!」
「冗談ではないよ。エド・・・・はありきたりな上に余り可愛くないな。フム・・・・エディはどうかな」

 人の話に耳を傾けることなく淡々と話を進めていくロイにブチ切れてエドワードは勢い良く両手を振りかざしデスクへ叩き落した。


「ざっけんじゃねーーーーーー!」


 執務室に、否、外にまで轟く声を上げてロイを睨む。

「人の話を聞け!」
「話?そんなものはないだろう。これは決定事項だ」
「な!」

 エドワードの罵声も何処吹く風のように流したロイは席を立ちドアへ歩み寄り。

「キミは今からホークアイ大尉とともにショッピングをしてきなさい」
「ショッピング?」
「先ほど言っただろう。女装をしろとね」

 不適な笑みを見せてからロイは執務室を出て行った。

 な、何を考えているんだ。
 オレに女装させて何をさせるつもりなんだ?

 天井を仰いで。

「わっけわかんねー」

 疲れたといわんばかりの声色で呟いて。

「に、しても」

 親父の奴!
 帰ったらボコルからな!!
 覚悟していろよ!!!

 しかし。

 覚悟をするのはエドワード本人だということを身をもって知るのはそれから十分後のことである。











 エドワードは渋々ホークアイとともに街へ繰り出したというよりはロイによって放り出されたといった方がいいだろう。
 剥れた顔で隣を歩くエドワードに苦笑しホークアイは声をかけた。

「少将のことを怒っているの?」
「あったり前だろ!突然女装をしろだなんて・・・・」
「そうね。その理由は聞いた?」
「婚約者と護衛・・・・でもさ」
「でも?」
「何で婚約者なわけ?」
「あら、聞いてないの」

 困った人ね、と呟くホークアイにエドワードが顔を上げて。

「何で・・・・男のオレが女装をしてアイツの婚約者なんてものをしなくてはいけないんだ?」

 剥れながらも不思議そうに訪ねるエドワードに視線を向けてホークアイは溜息を吐き。

「マスタング少将が将軍の地位に着いてからというものお見合いの話が後を絶たなくて、そのつもりはないと断言しているにも関らず毎日毎日送られてくるのよ」
「何が?」
「お見合い写真」
「は?」
「それとパーティの招待状」
「行けばいいじゃん」
「行ったらそこの娘を紹介されるのよ。是非嫁にと」
「フ〜ン、大変だな。将軍様も」
「ええ、だからマスタング少将に決まった人がいることをその親馬鹿に知らしめる為にエドワード君を呼び寄せたの」
「でも何でオレなわけ?少将は女性に困ってないだろ」

 あの顔とルックスだ。
 さぞ、おもてになることだろう。

「女性だと後々面倒だとおっしゃっていたわ」
「面倒?」

 首を傾げて問うエドワードにホークアイは頷いて。

「だって偽りの婚約者が本気になったら後が大変でしょ」
「・・・・そっか」
「その点、男性であるエドワード君はその心配もない」
「そうだな。男が男を好きになることはないもんな」
「・・・・ええ、そうね」

 ホークアイは歯切れの悪い返事をし視線を彷徨わせた。

「大尉?」

 不思議そうにホークアイを見詰めるエドワードに「何でもないのよ」と微笑み足を止めた。

「ここよ」

 二人が立ち止まった建物はとても高級そうで。

「ここって・・・・」
「少将御用達の店よ。さ、入りましょう」
「じょ、冗談じゃない!こんな高そうな所」
「何を躊躇っているの。これからエドワード君が相手をするのは資産家のご令嬢よ。安物の服なんてそれこそ少将が笑いものにされて相手の思うツボなの」
「で、でも」
「出費は全て少将もちよ。気にしなくていいわ」
「や、するだろう」

 頑なに入店しようとしないエドワードにホークハイは溜息を吐いて。

「エドワード君、あなたには悪いけどここで逃がすわけにはいかないの。私達の為にそして」
「そ、そして?」

 異様な気迫に後ずさるエドワードの腕を捕まえて。

「仕事の為に」
「し、仕事?」
「いらない招待状と見合い写真のお陰で少将がご機嫌斜めなの。だから」
「だから?」
「書類が山のように溜まっているのよ。おわかり?」

 エドワードは頷いて返答する。

 ここで逆らってはいけない気がする。
 逆らったら命がない気がする。

「私もそろそろ切れてもおかしくない状況なの。こんな所で足止めを食うのは時間の無駄なの」

 満面の微笑みではあるが目が全く笑っていないことにエドワードは背筋に冷汗を伝わせた。
 
「わかってくれたなら素直に入りなさい」

 ホークアイがビシッと店の玄関を指すと同時にエドワードは足早に入店したと同時に数名の店員に囲まれて「まずは美顔!」と店長の指示によって奥へ連行された。
 その際、エドワードの雄たけびが店内中に響き渡ったことはいうまでも無い。
 エドワードから遅れて入店したホークアイに店長が歩み寄る。

「いらっしゃいませ。ホークアイ様」
「今日は、どうやら少将から指示がきていたみたいね」
「ええ、先ほどお電話がありまして徹底的に磨けとの指示を仰ぎましたので店員一同、そのご希望に添えるよう準備して待っておりましたら本当に磨きがいがある方のようでとても嬉しいですわ」
「そうですか。それでは私は仕事に戻らせて頂きます。出来上がりはいつ頃になりますか?」
「この後髪を整えて体も磨かせて頂きますので・・・・五、六時間後かと」
「わかりました。ではそのように少将へお伝えしておきます」
「宜しくお願いします。ホークアイ様も休暇の際にはお立ち寄りください」
「そうするわ。ではお願いね」
「承りました」

 ホークアイを見送った店長は奥でいまだに叫んでいる青年に苦笑して。

「諦めが悪い子ね」

 一言呟いて数名に店番を命じ自ら奥へ足を向けた。

 いつもマスタング少将には世話になっているからね。
 あの子には悪いけど犠牲になって頂くわvv





 そうして。





 エドワードの抵抗も虚しく数名の女性店員らの手によって変貌した六時間後。

 店から黄色い声が聞こえてきた。

「どうやらお迎えがきたみたいよ。お姫様」
「だ〜〜〜れがお姫様だ!」
「フフ、そんなに剥れた顔をしたら美人な顔が勿体無いわよ」
「勿体無くて結構!」
「髪は右肩に掛けておいた方がいいわね。本当に綺麗な金髪、惚れ惚れするわ」
「そうかな?普通だろ」
「いいえ、中々出会えない髪質よ。店員も羨ましがっていたわ。さ、あと腰にベルトを巻いて」
「巻かないと駄目?」
「駄目!」
「う〜〜〜」
「覚悟を決めなさい!さ、少将がお待ちよ。行った行った」

 トンと軽く背を押されカーテンの向こうへ足を踏み出す。
 そこには黒のロングコートを肩に掛けたロイ・マスタングと右後ろにはホークアイ、左後ろにはハボックが立っていた。

「ほう、これは・・・・見違えたな」
「ほえ〜〜〜これがさっきの奴ですか?別人っすよ」

 三人の目の前には金の長髪を右肩に寄せ纏め、唇にはピンクの紅、丈が長い黒のセーターの腰には幅のあるこげ茶のベルト、白の短パンに黒のブーツ。
 どこからどうみても女性・・・というよりは中世的な雰囲気を纏っていた。

「いらっしゃいませ。マスタング少将。この子の出来栄えは如何ですか?」
「実に素晴らしい。見違えたよ」
「有難うございます。スカートを嫌がったので前を隠すように丈の長い服を持ってきました。これで何とか誤魔化せます。あとご注文のドレスですがサイズが合わなくて今仕立て直している所でして」
「明後日までには欲しいのだが」
「明日の午後にはできますわ」
「了解した。それでは姫」
「だ〜〜〜れが姫だ!!」
「表は変わっても中は変わらないか。言葉使いも直してもらうぞ」
「げ!」
「ホークアイ大尉」
「はっ」
「急がしてすまないが明日一日で言葉使いを直させてくれ」
「Yes,sir」
「ちょっとマジかよ〜〜〜」
「すまないね。私もかなり切羽詰っている状態なのだよ」
「みたいだな」
「おや、誰から聞いたのかね」
「ホークアイ大尉」

 ロイが振り返るとホークアイは目蓋を伏せて。

「申し訳ありません。出すぎたことだと思いましたが理由も知らないまま事を進めることを躊躇いましたもので」
「構わんよ。ま、そういうことだ。では行こうか」
「行くって何処に?」
「昼食もとらせずにコチラへ連れて来てしまったからね。お詫びに夕食をご馳走しよう」
「・・・・それって外食」
「そうだが」
「もしかしなくても女性のように慎ましく食べろって言わないよな」

 恐々と尋ねるエドワードにロイは口の端を上げて。

「わかっているじゃないか」

 ブチッと切れたエドワードは怒りを露にして。

「じょーーーーだんじゃねーーーーー!!この格好をしているだけでも我慢してやっているのにその上、食べ方まで調教されたら」
「されたら?」
「切れてそこら中を練成しまくるぞ!」
「おや、それは困る。事後処理が大変だ」

 飄々と答えるロイにエドワードは一気に疲れを見せて。

「もういいからもう休ませろ」
「少将、その方がよろしいかと。エドワード君も突然のことで戸惑っていますし」
「これ以上無理をさせたら壊れて使い物になりませんよ」

ホークアイとハボックの言葉にロイは仕方ないといわんばかりに肩を竦めた。

「わかった。では邸へ帰ろうか。エディ」
「邸って・・・・まさかアンタの!」
「私以外どこの邸だね」
「マジかよ・・・・」

 こんな奴と四六時中一緒なのか?
 冗談だろう。
 もう泣きたい。

「さて、夕飯はどうするかな。出前でもとるか」
「出前だと?そんな勿体無いことするな!キッチンあるんだろ?」
「あるが」
「じゃオレが作る」
「キミがかね?」
「ああ、何か不満でも」

 ギロリンと睨みつけながら尋ねるエドワードに苦笑して。

「いいや、楽しみにしているよ」

 ロイはさり気なくエドワードの肩に手を回し、四人は店を出て車へ乗り込んだ。
 それからハボックの運転でロイの邸へ向かっている間、ホークアイがエドワードへ座り方話方などなどを教え込んだ。
 エドワードもやるとなったら中途半端なことは嫌いなのか注意された所は一度で直し覚えていった。

「着きました」

 ハボックが報せると先にホークアイが出て周囲を見渡しロイとエドワードを外へ促した。

「厳重すぎねー?」
「これでも私は将軍だからね。命を狙われることが多々ある」
「それで護衛か」
「そうだ。ま、私の護衛というよりはキミ自身の護衛だがね」
「オレの?」
「私には敵が多くてね。はっきり言ってド素人は足を引っ張るだけで邪魔だ」

 キッパリ言い切るロイにエドワードは少なからず同意した。

 確かに。
 敵が多くその上、見境がないのなら下手に人を傍においておけないな。

「だが、キミは錬金術を使える。もちろん、ホーエンハイムの教えで体術もマスターしているはずだ」
「ああ、錬金術はまず体を鍛えることからって教えられたからな」
「それでいい。私も安心してキミを傍における」

 なるほど。
 そういうことか。
 コイツの言う通りオレは錬金術と体術を人並み以上に長けている。
 少将の手を煩わせることはない。

「それはわかった。で、親父とどういう関係?」

 只の親戚って仲じゃないはずだ。

 エドワードは疑問を眼光にのせロイを見詰めた。

「知りたいかね」
「是非とも」
「ではその話は夕食をまじえながら話すとしよう」

 踵を返して。

「ホークアイ大尉、ハボック中尉、ご苦労。明日も頼む」
「「Yes,sir」」

 二人は敬礼し、邸へ入っていくロイとエドワードを見送り吐息を吐いて。

「しっかし本当に別人っていうか中性的な感じというか」
「本当に」
「でもあの子と少将ってどういう関係なんでしょうね」
「さぁ?ま、教えてくれる時は教えれくれるでしょ」
「そうっすね」
「さ、ハボック中尉。司令部へ帰るわよ」
「Yes,sir」

 二人は車に乗り込みマスタング邸を後にした。





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