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オレは人でいう『天使』という生き物。 とても曖昧な生き物らしい。 人間であるロイがそう言った。 神も天使も全ては弱い人間が考えた妄想だと天使であるオレを目の前にして言い切った。 オレは何ていったら言いかわからなくてそれでも信じてくれないことが悲しくて口を開こうとした。 その時。
「天使が神が私達に何をしてくれる?祈ればそれを叶えてくれるのかね?助けを請うたら助けてくれるのか?何もしてくれないだろう。いるとしてもただ見ているだけだ」 愚かな私達を、と自嘲気味に吐き捨てるように言った。 まるで止めを刺すかのように・・・・。
「天使であるオレが目の前にいても?」
それでも負けずに背中にある真っ白な羽を羽ばたかせて問えば。
「私は信じない」
目蓋を閉じて否定する。
「何故?」 「私には必要のないものだから」
居ても居なくても関係ないとスウッと目蓋を上げ冷めた瞳で訴える。
まるでオレを拒む言い方と態度。
「オレ、邪魔?」 「別に邪魔ではないさ」 「でも信じないのだろ」 「ああ、信じないよ。だがキミの存在自体を否定しているわけではない」 「天使を・・・・神を・・・・否定しているなら同じことだ」 「私は一個人のキミは否定しないと言っている。天使、神など関係なくキミだけは別だ」 「わからない」
頭を左右に振り困惑な面持ちを見せるオレにロイは苦笑を漏らした。
「ではわからせてあげよう」 「え」 「天使であるキミが必要ではないということを・・・・」
差し伸べられたロイの手を訳がわからないまま掴んだ。
「キミ自身が必要だということを」
言葉と同時に顎を掴み顔を上げさせられ唇に温かいものが触れた。
「!」 「キミは言ったね。神からの使いで私に一つだけ願いを叶えるためにココへ来たと」
頷くことで答えるとロイは微笑み。
「では、願いだ。私が死ぬまで傍にいろ」 「な!」 「なに人間の一生などキミ達に比べたらあっという間だろう」 「何を言って・・・・ロイはまだ若いだろ!これから結婚も」 「しないよ。キミが私の手元に来たから」 「!?」 「私が死んで天界に戻ったら神とやらに言っておいてくれ。最高の贈り物だったとね」 「ロ・・・イ・・・」 「出会った瞬間、キミに一目惚れをしたんだよ。いい大人が子供にね」 「一目惚れって・・・・オレ男だぞ」 「それも些細なことだ」 「些細って」 「欲しいのはキミの体と心だよ」
まるで壊れ物を扱うようにロイはオレの頬を優しく撫で唇へ口付けた。 啄ばむように角度を変えて何度も何度も・・・・。
「・・・・ッロイ・・・・」 「好きだよ」 「名前も知らないくせにそんなこと言うなよ」 「キミが教えてくれないからだろう」 「だって・・・・願いを叶えたら直ぐに帰るつもりだったし・・・・」 「フム、それは私の願いを叶えてくれるということかね」 「し、仕方ないだろ!どんな願いでも叶えろって言われたんだから」 「ククク、そうか。では一度ぐらい心から神に礼を言っておこう」 「一度かよ」 「一度で十分だよ。それよりも名は教えてくれないのかい?」 「・・・・エドワード」
名を告げたオレをロイは繁々と見詰めて。
「では、エディと呼ぼう」 「エディ?」
エドなら天界でも呼ばれていた愛称だからわかるが何故エディなんだ??
「エドなら誰もが呼ぶ愛称だろう。エディなど男のキミに誰も呼ばないと思ってね」
呆れながらロイを見詰めるとウィンクを寄越して。
「ちょっとした独占欲さ」 「大人げねー」 「なんとでも。それよりもエディは何が望みかね」 「え」 「私の願いを叶えてくれるんだ。もちろんエディの望みも叶えないと平等じゃないだろう」
その言葉にエドワードは目を見張った。
「何を言って・・・・オレは天使だぞ!平等もくそもあるかよ!!」 「確かにエディのように何でも叶えてやれることはできないが私が出来うる限りのことはしよう」 「おい!人の話を聞いているのか?!」 「聞いているとも。で、何が望みだい?」
まったく聞いてねー!!
「だからオレは」 「私は一個人のエディに聞いている」 「ロイ」 「天使のエディじゃない。エディ自身に聞いているんだよ」
ロイの逞しい両腕がエドワードの体を包み込む。
「エディ、何が望みかね」
耳元へ甘く優しい声が木霊する。
「・・・・今は何もない・・・・」 「なら、出来たら言ってくれるかな?」 「うん」
初めて微笑みを向けたエドワードにロイは眩しそうに目を細めて。
「待っているよ」
そう囁いて身を屈めた。 甘いキスをエドワードへ送る為に・・・・。
それから二十年後。
人間にしては早い寿命だった。 ロイが大総統の座に着いたのが五年前。 それから体を患わせて日に日にやせて仕舞いにはベットから起き上がれなくなっていった。 原因はわからなかった。 ただ、どんなにつらくてもロイは笑顔を絶やさずにエドワードへ囁いた。
「私の傍にいてくれ。エディ」
エドワードが好きな優しい微笑みと甘い声で・・・・。 それを聞くたびにエドワードは知らず知らず涙を頬へ伝わせた。
「うん、ずっとずっと傍に居るから・・・・」
ロイの右手を両手で包み頬へ摺り寄せながらオレは『願い』を決めた。
そして。
満月の夜、眠るようにロイは逝った。 それを見送ったエドワードはゆっくりと立ち上がり背中に真っ白な翼を出してロイを大切に抱きしめて夜空へと羽ばたいた。
オレは天界へは戻らない。 ロイと約束した。 ずっと一緒にいると・・・・。
絶え間なく涙を流して行き着いた先は地の果てだった。 周囲は大きな岩が聳えたたち人間が到底近づくことが出来ない所だ。 エドワードが降り立った場所には草花が絨毯のように咲き誇っていた。
「ロイ、ここいい所だろ。一度連れて来たかったんだ」
そっとロイを降ろしてエドワードは両手を合わせ地へつけた。
「ここでならゆっくり眠れる」
神々しい光がロイを包む。
「そして魂も持っていかれない」
光がおさまるとそこには水晶が高く聳え立っていた。 その中にはロイが微笑んで眠っている。
「ちょっと寒いけど大丈夫、オレもそこにいくから」
そっと七色に光る水晶へ両手を添えればゆっくりと引き寄せられるように中へと入っていく。
「これでずっと一緒に居れるよ。ロイ」
本当は魂を天界へ導かなければいけないのはわかっている。 けれど。 オレはロイを失いたくない!
「ごめんな。身勝手な奴で・・・・ごめん」
目蓋を閉じてエドワードは謝罪を繰り返し、両腕をロイの背中に回して抱きしめた。 水晶におさまったエドワードはとても幸せそうな微笑を見せてロイとともに眠りについた。
ね、知ってた? ロイが一目惚れしたって言った時、オレの心を見透かされたと思ったんだよ。 初めて地上へ降りてロイを見た瞬間、一目惚れをしたのはオレの方が先なんだ。 だから。 神様に言われてロイの元へきたって言うのは嘘。 ロイと話をしてみたかった。 そして。 出来ることなら傍に居たかったから・・・・。
オレは幸せ者だ。 ロイに二つも願いを聞き届けてもらったよ。
好きだよ。 愛している、ロイ・・・・。
END
04/03/08UP
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