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ロイ・マスタング(27)。 地位は大佐。 二つ名は焔の錬金術師。
オレの上司で、片思いの人。
「エルリック少佐、これをホークアイ中尉へ渡してくれ」
執務室から出てきたロイは通りかかったエドワードへ書類を渡し黒のロングコートへ袖を通して玄関へ向かった。
「あ、あの、どちらへ?」 「昼食をとってくる」
振り返りもせずに答えロイは颯爽と行ってしまった。
あいもかわらず素っ気無い。 オレ嫌われているのかな?
一つ溜息を吐いてエドワードは請け負った書類をホークアイに渡すため司令室へ足を向けた。
「外に行った?」
司令室へ戻り、ホークアイへ書類を渡しながら大佐が外へ行った事を口にした途端、盛大な溜息を吐いた。
「えっと・・・・駄目でしたか?」 「そうね。出来れば留めて欲しかったわ」 「大佐が外へ行くと二、三時間は帰ってこねーんだよ」
ホークアイとのやり取りを伺っていたハボック少尉が答えた。
「二、三時間も?」 「そ、だから書類が溜まる溜まる」
と言いながらチラッと視線を向けた先には山のように積みあがった書類があった。
「もしかして・・・・これ全部?」 「そ、全部」 「冗談・・・・」 「冗談ではないのよ。エドワード君はまだ赴任して間もないから知らないでしょうけど、大佐はやる時にはやってくれるけれどさぼるときは徹底的にさぼるの」 「・・・・・・」
それってナマケモノってことかな?
「じゃ探しに行った方がいいですよね」 「「・・・・・・大将が」エドワード君が」
ホークアイとハボックは互いを見合ってからエドワードへ向き直り。
「そうね。任せていいかしら」 「はい」 「外は寒いからコートを着ていけよ」 「わかってる。じゃいってきます」 「「いってらっしゃい」」
二人はエドワードを見送り、ニヤリと笑って。
「これで大佐の逃亡癖直りますね」 「だといいわね」
エドワードから渡されたロイからの書類へ視線を通していたホークアイがクスリと微笑み。
「前言撤回、直るわ」 「へ?」
指に挟んでメモを一枚ハボックの目の前でちらつかせた。
「それは?」 「契約書よ」 「は?」 「さ、ハボック少尉。この書類を執務室へ持って行って頂戴」 「え、でも」
この山の書類を見たら大佐にげますよ、と視線で問うハボックに綺麗に微笑んで。
「逃げないわ。いえ、逃げられないっと言った方がいいわね」 「はぁ・・・・」
今一理解が出来ないハボックはホークアイに言われるまま書類を執務室へ持っていく。
「それと大佐はもう戻ってこないから今日は定時で帰るわよ」 「・・・・了解っす」
その言葉の意味は理解したのか。 ハボックは口の端を上げて了承した。
「大佐、明日は残業ですよ」
ホークアイはメモへ微笑み胸ポケットへしまい、書類を両手に抱えて司令室を後にした。
さて。 その頃エドワードは我が上司を探して街中を走っていた。
たく何処に行ったんだよ〜〜〜。
息を乱しながら周囲を見渡し、黒のロングコートの裾を羽ばたかせて駆け出した。
あ〜〜〜そういやオレ大佐が行く所って知らないや。 どうしようかな。 一度戻ってホークアイ中尉に聞くか。
足を止めて空を仰ぎ、吐息を吐いて踵を返し再度駆け出そうとした。 その時。 腕を掴まれ体制が崩れた。
え?
後ろへ倒れると思った矢先、ドンと誰かに支えられた。
「やぁ、鋼の」
この声!
慌てて振り返るとそこのは今の今まで探していたロイが立っていた。
「大佐!急に引っ張らないでください」 「すまないね。それより鋼のは司令部にいたのでは?」 「探しにきました」 「誰を?」 「大佐をです!」 「私を?何故」 「外へ出ると二、三時間は戻ってこないと聞いたので迎えに来ました。さ、戻りましょう」
ロイの腕を掴んで促すエドワードにロイは「大丈夫だよ」と囁いて。
「今日の勤務は終了だ」 「は?」 「キミが追いかけてきてくれたからね」 「何を言って」 「さ、行こうか」 「行くって何処に?」 「もちろん私の邸へ」 「!」
驚愕の面持ちを露にするエドワードを引きずるようにロイは満面の笑みで邸へ足を向けた。
そうして。
エドワードはロイの邸でお茶をご馳走になっていた。
な、なんでこんなことになったんだ?
チラッと目の前にいる上司へ視線を向けると視線が合い慌てて俯いた。
何で見ているんだよ〜〜〜。
既に混乱に陥っているエドワードに苦笑してロイは口を開いた。
「鋼のは」
カップに手を伸ばして。
「私のことが嫌いかね」
お茶を啜りながら尋ねるロイにエドワードは驚き顔を上げた。
「何を突然・・・・」 「キミは私の前だとなぜか緊張しては避けるだろう」 「!」 「だから私のことが嫌いなのかと思ってね」 「き、嫌いでは・・・・ありません・・・・」
少し上ずった声で答えるエドワードに。
「敬語だと話しずらいだろう。崩して構わないよ」 「ですが」 「もう勤務は終了したしね」
だから構わない、と優しく囁くロイにエドワードは胸を弾ませた。
やっぱりカッコイイ。 それに優しい。
実らない恋を抱えているエドワードは見惚れる反面、胸が痛くそれを耐えるように両手を力の限り握り締めた。
「じゃお言葉に甘えて。嫌いじゃない」 「そうか。では何故避けていた?」 「別に避けてなんかいないだろ。言われた仕事はしている」 「だが仕事以外は私を避けているだろう」 「仕事以外で付き合う関係じゃねーだろ」
ズキッ!
自分の言葉が己の胸を刃となって突き刺さる。
「私はできれば公私とも関係を持ちたいのだが」 「え?」
エドワードは目を見張り。
今・・・・ロイは何て言った?
「仕事だけではなく、私情でもお付き合いを願いたい」 「な、何を言って・・・・冗談は」 「すまないが、私は冗談が好きではない」 「!」 「本気だよ。鋼の、否、エド」
ドキン!
な、な、な! 急に愛称で呼ぶな!!
既にエドワードの心臓は早鐘のように鳴る上に高揚感が溢れてきて止まらない。
どうしよう。 どうしよう。
「は、話し相手ならこんな子供じゃなくても」 「話し相手か。それも嬉しいけれど私がキミに望んでいるのはそれではない」
話し相手じゃない? だったらナニ?
胸倉を掴み押し当てる。 逸る心を抑えるために・・・・。 期待などしないように・・・・。
「私がキミに望んでいることは」
ドキン、ドキン。
「ずっと傍にいて」
ドキン、ドキン、ドキン。
「支えて欲しい」 「っつ」
とてつもなく優しい瞳と微笑みをエドワードへ向けて。
「愛しているよ」
ドキン!
ロイの告白を聞いた途端、ポロリと眦から涙が溢れた。
何て言った? 大佐は今オレに何て言ったんだ?
「エド」
慌ててロイがエドワードの横へ腰を降ろし涙を指で拭う。 その指を震える両手で包み込み。
「も・・・・ち・・ど」 「エド」 「もう一度・・・・言って・・・・」
震える唇で小さな声で尋ねる。
ロイはもう片方の手でエドワードの頬を撫でて。
「愛している。エドワード」
目を見開いたまま涙が止め処なく流れる。
「うそ・・・・」 「どうして嘘だと思うんだい?」 「だってオレ男で大佐も男」 「そうだね」 「それに年がはなれていて」 「うん、十もはなれていて性別も同じだけど、別に問題はないだろう」 「え」
エドワードの耳元へ唇を寄せて。
「私とエドの気持ちさえ同じなら何の問題もないだろう」
優しく甘く囁くロイの声にエドワードは歓喜で全身を震わせた。 「エド」 「う」 「う?」 「嬉しい」
ギュッと目蓋を瞑りロイの胸元へ顔を埋める。 そんなエドワードをロイは両腕で優しく包み込む。
「オレも」 「ん?」 「オレも好きだよ。ロイ」
そう言ってエドワードは顔を上げてロイの唇へ口付けて。
「ロイの焔を見てオレは軍人になった」 「私の焔を見て?」 「ああ、ロイの焔はアンタそのものだから」
心に焼きつく焔。 あの日。 街で事件が起って野次馬に混ざって見に行ったらロイがいた。 部下へ指示をしていた。 その時。 取り押さえた犯人がロイに襲い掛かった。 しかし。 その者はロイの焔によって一瞬にして燃え上がった。 焔の向こうにいるロイはとても綺麗で・・・・。
「一目惚れだった」 「エド」 「男に惚れるなんておかしな話だけど・・・・でも本当に綺麗だっ」
言葉は続けられなかった。 ロイが唇で塞いだから・・・・。
「もう、いいよ」 「ロイ」 「この唇で聞くのもいいけどエドの全てで聞きたいから」 「え」 「だからこれからすることに」
ロイの唇を口付けで遮りエドワードは両腕をロイの首へ回して。
「どんなことをされてもロイならいい」
その一言でロイは自制が切れた。 エドワードが赴任してきたその日にロイは十もはなれた青年に一目惚れをし、今日までの片思いが実ったのだ。 我慢ができるはずがない。
「愛しているよ。エドワード」
そっと甘く囁いて二つの影は重なっていった。
さて。 その頃、東方司令部の司令室では。
「今頃、どうなったんでしょうね」 「きっとうまくいっているわ。両思いだったんだもの。知らぬは本人達のみよ」 「本当に鈍感な二人っすね〜」 「他人のことには敏感だけど」 「まったく」 「明日が楽しみね」
ホークアイの言葉にハボックは笑みで返した。
END
04/05/08UP
このお話は3月のインテにて発行したコピー誌のお話です。
なんつーか、初々しいな〜〜〜と思うのは忍だけだろうな〜(苦笑)
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