|
ふと、意識が浮上したオレは目蓋をゆっくりと開けた。 すると、月明かりの下。 視界に端正な顔と漆黒の髪が飛び込んでくるや否や息を呑んだ。
・・・・・・・ロイ・・・・。
何度も見ている寝顔にオレは毎回驚かされる。
端正な寝顔。 綺麗な漆黒の髪。
どれも全てが鮮やかでそしてとても綺麗で・・・・。 見慣れろという方が無理。
身体をうつ伏せ、静かに寝息をたてている男を見詰める。
ね、何故オレを抱くの?
抱かれる度に抱く疑問。
ロイから好きと言われたことも無い。
オレも好きと言ったことが無い。
言えば相手を束縛してしまいそうで・・・・嫌われてしまいそうで・・・・。 この温かい腕が離れて言ってしまいそうで・・・・怖いのだ。
眦から一滴の涙が零れ落ちる。 逞しいロイの腕に口付け、そっと左手でロイの唇をなぞる。
柔らかい唇。 この唇でオレの全てを翻弄させる。
「ロイ・・・・オレはアンタが・・・・」
好きだよ。 ううん、そんな言葉じゃ足りない。
愛している。
肝心な言葉は心の奥底に押し込め、代わりに涙を流す。
男のオレが同性であるアンタを好きだなんて迷惑以外なんでもないから・・・・オレは自分の気持ちを殺す。 それでアンタの温もりが手に入るなら安いものだと割り切っていた。 割り切っていたはずなのに・・・・日に日に心は悲しみにくれて痛みが増していく。
離れたくない。 この温もりを手放したくない。
けれど。
ゆっくりとロイを起さぬように起き上がる。
「もう限界みたい」
身体だけの関係は・・・・もう限界だ。 女性の移り香を纏いそして抱いた手でオレを抱く。 頭は拒否をするのに体はロイを求めてる。 悲しいほどに貴方を求めて、求めて・・・・。 だから。
「消えるよ」
貴方の前から・・・・。 軍の研究は虱潰しに漁った。 これ以上軍の資料を漁る必要はない。 アルにその旨を告げると国家錬金術師を辞めていいと言ってくれた。 本当の理由は言わなかったけれど聡い弟のことだ。 薄々は気づいているだろう。
「恩を仇で返すようなことをしてごめんな」
そっと屈んで頬に唇を落とす。
こんなオレを抱いてくれて有難う。 とても嬉しかったよ。
両手を合わせ右腕をナイフに錬成する。
金の髪を左手で掴み切り落とす。
「これでアンタの想いを断ち切った」
言葉とは裏腹に涙は留まる事は無く頬を伝い流れ落ちる。
断ち切れるわけが無い。 こんなにも・・・・胸が張裂けそうな程愛しているのに・・・・。 断ち切れるわけが無いじゃないか!
キュっと下唇を噛み締めて。 さ、行こう。 アルが待っている。
髪をシーツに落とし国家錬金術師の証である銀時計をその上に置き、静かにベットから抜け出した。 服を身に着けドアに足を向けノブを回し開けて振り返った。
「バイバイ」
もう二度と会わないだろう愛しい人に別れの言葉を呟いてエドワードは寝室を後にした。
- 続 -
04/06/02UP
このお話は『褥』というタイトルのイラストから出来たお話です。 是非、かど様の素敵なサイトに行ってみてください。
素敵なイラスト満載です!!
|