□ 貴方のためなら □










「あっけない」

 翳していた銃口を下げ、少年はポツリと呟いた。
 ゆっくりと雲から顔を出した三日月に照らされると同時に少年の姿が露になった。
 金の長髪。
 金の瞳。
 白い肌を覆う黒い服。

「もう少し手ごたえがあると思っていたのに期待して損した」

 息絶えて地に転がっている男へ吐き捨てるように言いながら拳銃を懐にしまった。

「ま、いいや。これでアイツも動きやすくなるだろうし」

 踵を返し、薄暗い路地から表通りに足を向けた。

 あ〜〜〜でもまた怒られるか。

 このことを知ると同時に怒りを露にするであろう彼の人を思いげんなりしながら帰路についた。










 翌朝。

「エディ!」

 今の今まで電話をしていた漆黒の髪と瞳を持つ青年が怒りを露にし、キッチンで朝食を作っている恋人へ怒鳴り声とともに足を踏み込んだ。

 あや、ばれちった。

 ポーンとパンケーキを引っくり返しながら笑顔で「なに?」と問う。

「言いたいことはわかっているはずだが」
「なんのことかな〜」
「エディ、君はまたやったね」
「だから何を」
「殺人を」
「それが?」

 平然と答えるエドワードに。

「エディ!」

 哀感の顔で怒鳴るロイにエドワードはフライパンを置き、そっと右手をロイの頬を撫でるように添えた。

「いいじゃないか。これで五月蝿い奴がいなくなった」
「エディ」
「ロイの敵はオレの敵だ。それにアイツは死んで当たり前の奴だぞ。ロイが気に病むことはない」
「そうじゃない。確かにアイツは死んで当然のことをおかした。けれどそんな奴の血でエディの手を汚す必要はない。私は言ったはずだ。もう人殺しをしないで欲しいと………私の為にと思ってくれるのは嬉しい。だが」
「やり方を間違えている?耳にタコだよ。オレは間違っちゃいない」
「エディ」
「ロイを守る為ならなんでもする。例え、ロイに嫌われ」
「嫌うわけがないだろう!」

 悲痛に言葉にするや否やエドワードをかき抱いた。

「ロイ」
「嫌うわけがない。どんなエディでも私はキミを愛している」
「ん」

 広い背中に両腕を回し、エドワードは嬉しそうに微笑み目蓋を閉じた。


 この温かい場所を守る為ならオレは殺人鬼のままでいいんだ。

 ロイ。

 アンタはオレの世界そのものだから………。

 命を懸けて守るよ。 


「オレも愛している。ロイ」





   END



   05/06/28UP