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軍の年末年始は死ぬ程忙しい。
ここ大総統府も同様で特に最上階にある執務室の責任者、キング・ブラッドレイ大総統はデスクに噛り付くように決済を進めていた。
「大総統、次の書類です」 「まだあるのか?!」 「当然です」
まるで隙間を埋めるかのようにデスクに積み上げられていく書類にキングは盛大な溜息を吐いた。
「忙しいのは大総統だけではありません」 「軍部全てが忙しいのです」 「さ、手を動かしてください。まだ、まだ、まだ、まだ隣室に書類が残ってます」
敏腕秘書三名が口々に言い、仕事を勧める。
「そ、そんなにあるのかね」 「「「はい、いつもの如く」」」 「なんとか」 「「「なりません」」」
言い切る秘書達にキングは撃沈しつつも書類に手をかけた。
「では、私達は隣室にいますので何かありましたらお呼びください」
一礼し三人が執務室を出て行くと同時にキングはペンをデスクに放り投げた。
ここ一週間。 邸に帰ってない。 息子の顔が見たい。 最愛の妻の顔が見たい………。
そこまで思いキングは立ち上がり左の壁に歩み寄った。
見たいなら見に行けばいいのだ。
少し力を込めて押すとガコンと壁であったコンクリートが扉のように開いた。
「こういう時は大総統でよかったと思う」
嬉しそうに微笑みながらキングはコンクリートの扉を潜り、そっと閉めた。
その行き先は………。
「キング義父さん。オレ、忙しいんだけど」 「私もだよ。我が息子」 「だったら執務室で仕事をしろ!」 「していたらエドの顔が見たくなってね」 「だから来たのか?こんな所から」
ここは少将の執務室。 ロイとエドワードが書類に追われている所に壁がガコンとなり開いたのだから二人は驚愕。 ロイは慌ててエドワードを庇うように抱きしめると同時に出現したのがキングであった。
「ですが、このような裏口があるとはしりませんでした」 「当然だ。大総統の地位に上り詰めて初めてしる道ぞ」
テーブルを挟んで笑顔でお茶をするロイとキングにエドワードは頭を痛めつつもロイの隣に座りお茶をしていた。
「うん、久々の息子とのお茶は美味しい」 「そうかよ!お茶が終わったら帰れよ」
オレ達も忙しいんだ!と暗に告げるエドワードにキングはそ知らぬ顔。
「キング義父さん!」 「いいじゃないか。エディ、久しぶりにお義父さんに会えて嬉しいだろう」 「そ、そりゃ嬉しいけど………」
ここ数週間、キング義父さんに会えなかったのは事実だ。 会いにきてくれたことも嬉しい! しかし、だ。
「キング義父さん」 「なんだい」 「今夜こそは帰れるよね?」
その言葉にキングは明後日の方に視線を向けた。
無理なのか。
ガクリと落胆するエドワードにキングは首を傾げた。
「今夜は何かあるのか?エド」 「あるもなにもリザ義母さんと何日顔を会わせてないんだよ」 「リザと………一週間かな」 「違う!三週間だ!!」
キングに噛み付くように怒鳴るエドワードは身を乗り出し、キングの胸倉を掴んだ。
「一週間は邸に帰ってない日数だろう。二週間はリザ義母さんがキング義父さんの顔を見ていない日数だ!」 「!」 「キング義父さんは寝顔とか見ているかも知れないけれどリザ義母さんは見れて無いんだよ。しかも、あの大きなベットに一人で温めて寂しいに決っているだろうが!!」
エドワードは手を離し、ソファに腰を降ろして遠い目で口を開けた。
「ああ見えてもリザ義母さん、綺麗だし美人だからな。狙っている男も多いってきくし」 「!」 「そういや、下官がリザ義母さんをみて一目惚れしたって言ってたな」 「!!」 「あ、今夜は確かキング義父さんの代わりにどこぞのパーティに出席しなければいけないって言っていたな。キング義父さんが傍にいないことをいいことにいい寄る男が沢山出てくるだろうな。リザ義母さん、寂しくて間違い起こすかも」
そこまでエドワードがしんみりと実感があるように言うとキングが立ち上がった。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆるさん!!!!!!!!!」
拳を震わせて怒鳴るキングにエドワードは「でもね」と言葉を投げる。
「許さないも何も仕事仕事で追われてリザ義母さんを放っているキング義父さんの所為なんだよ」 「ヴッ」 「キング義父さんは責められないよね。自分の所為なんだから」 「ヴヴッ」 「例え、リザ義母さんが不倫しても文句は言えないよね〜」 「!………そ」 「そ?」 「そんなことはゆるさ〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!リザは私のものだ!!!!!!!!!!」
そう叫ぶや否やキングはドアから颯爽と駆け出して行った。
「エディ、彼女が不倫することはまずないだろう」
キングの背を見送り、ロイの隣で嬉しそうにお茶をしているエドワードに視線を向ける。
「うん、ないよ。リザ義母さんはキング義父さん一途だから」
他の男なんてへのへのもへじだもんね。
「だったら」 「こうでも言わないとキング義父さんは仕事をさぼろうとするだろう。そうしたらリザ義母さんと会えない日が増えていくし、それにそろそろリザ義母さんも限界近いと思うし」
毎年この時期になるとリザ義母さんは寂しそうにしていた。 いつ帰ってくるかわからないキングを寂しさを耐えるようにずっと待っていたから………。
「リザ義母さんは自分の弱いところをトコトン隠すからね。こっちが気づいてやらないと」 「なるほど。エディはそんな思いはしていないかい?」 「オレ?オレは始終ロイと一緒だからな。それはない。でも」 「でも?」 「激務の際はロイの熱を感じられないからちょっと寂しい………」 「エディ」 「だから早く終わらせて、その………ロイで……満たして欲しいなって思ってたり………」
耳まで真っ赤に染めてエドワードは恥ずかしそうに呟いた。 そんな可愛らしいエドワードにロイはギュっと抱きしめて。
「激務が終わったら思いっきり愛してあげよう」 「うん」
エドワードもロイの背中に両腕を回し、一時の至福を味わっていた。 ドアの外で書類を持ってきたハボックが白くなっていたのはいうまでもない。
「うらやましいっす………少将、大将………オレも彼女が欲しい………」
闇夜へと移り変わった時刻、リザはキングの代わりにとある大富豪のパーティへと赴いていた。 金の髪をアップし青いカクテルドレスに狐の毛を首に巻いて壁の華であるリザの下へ先ほどから若い男性が引っ切り無しにダンスの誘いが絶えなかった。 それをやんわりと断りを入れながらも胸中では言い寄る相手に悪態をついていた。
まったく次から次へと暇人が。 あの人以外と踊れるわけが無い。
口元を片手で覆い盛大な溜息を吐いて。
今夜もあの人は帰ってこないのかしら。 ……………寂しいわ。 あの人がいなければベットも………。 今夜はソファで寝ようかしら。
そんなことを思案しながらも断りを入れ、早々にこの場を後にしようと主催者である男に歩み寄ろうとした。
その時。
会場の入口付近からざわめきが起った。 なにかと思いリザは視線を声の方に向けるとそこにはいるはずが無い人物が居た。
キング!!
今の今まで思っていた人物の出現にリザは心から驚愕した。
何故? 仕事は? どうしてここに?
疑問ばかりが思考をしめリザは呆然とキングを眺めた。 彼は周囲に挨拶をしながら真っ直ぐにリザへと歩み寄る。
「リザ」
ああ! 久しぶりのキングの声。 心が震える。
逞しい腕がそっとリザを包み込む。
久しぶりの………本当に久しぶりのキングの温もり。
リザは両腕をキングの背に回し、ギュっと抱きしめた。
「寂しい………思いをさせたな」
その言葉にリザは小さく頭を左右に振った。
「帰ろう」
コクンと頷き、キングは主催者である老人に一礼をしてから会場を後にした。 車に乗り込み、リザはゆっくりと顔を上げた。 瞳が潤んでいた。
「リザ」
キングは愛しそうに頬を撫でる。
「あなた、仕事は?」 「三日分、終わらしてきた」 「三日分?」 「そうだ。そして三日分休みをもぎ取ってきた」 「!」 「寂しい思いをさせたな」 「あなた………」
リザの髪留めをそっと取りサラリと落ちた金糸に指を絡めながらキングは顔を近づけた。
「ただいま、リザ」 「お帰り、あなた」
啄ばむ口付け。 二度目は角度を変えて深く口付けた。
久方ぶりのキングの熱にリザはうっとりと目蓋を閉じた。
年末年始。
軍は忙しい。
しかし。
愛しい人の為ならばいかようにも時間はあけられる。
- 終 -
04/08/27UP
小話・ロイエドの『激務』から思いついたお話しです。 キングの場合、大総統という地位からして忙しいのでは?と思いじゃリザは?と思考を巡らせて最終的に寂しい思いをしているのでは!!という結論にいたり書いてみました。 馬鹿ですね〜。 仕事をしながら何を考えているのかと自分自身に叱咤しつつ書いて楽しかったですvv ロイエドもさりげなくラブラブだしvvv あああ〜やっぱりロイエドいいよねvv
もちろんキング×リザも素晴らしいです!!
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