□ 義父の無駄な努力 □










 本日も平和なセントラル。
 その中央に位置する中央司令部と大総統府も平和で・・・・・・あるはずだった。

 
 チュドーーーーーン!!


 またか。

 ロイ・マスタング少将は呆れながら目の前の光景を眺めた。
 そこは普通の廊下であった。
 そう。
 ロイがトラップを踏むまでは・・・・。
 今はものの見事に崩れ人が通れはしない。

 今日で何回目だ?

 頭を抱えながら指折りで数えていると。

「十回目だ」

 怒気が入った声色で背後から答えてくれたのはロイの妻であり秘書であるエドワード。

「エディ」

 振り返るとかなりご立腹のようで額には青筋をたて目の前の現状に頬を引きつらせている。

「そうだったね。ま、でも十回もこんな目にあって私が無事っていうのもまた幸運だね」
「あったり前だ!その幸運今日最後まで持ちこたえろよ。それまでに犯人を突き止めてやる!!!」

 両指を鳴らして不適な笑みを見せるエドワードにロイは頷くしかなかった。

 あ〜あ、これはかなり切れているな。
 
 エドワードから崩れた廊下へ視線を向けて。

 犯人ね。
 私だけを狙ったようにこのようなトラップを仕掛けるのは・・・・あの人しかいないだろうな〜。

 盛大な溜息とともに胸ポケットから銀の細長いケースを取り出し中から白いチョークを取り出す。
 その場へ跪き錬成陣を描き、片手を手前に置くとロイの周囲は赤い光が包み込むと同時に廊下は元に戻った。

「たく、なんでロイが直さなきゃいけねーんだよ!!」

 ご立腹であるエドワードに苦笑してロイは窓から青空を見上げた。

 さて。
 あといくつのトラップがあるのかな。

 胸中で嘆息しロイは直った廊下を渡ってエドワードとともに自分の執務室へ向かった。

 むむ!また失敗か。

 そんな二人を物陰に隠れて見つめている一人の男性ことこの国の代表者であり、統治しているキング・ブラッドレイは悔しそうに下唇を噛み締めていた。

 くそ!
 十個のトラップを傷一つも負わずにクリアーするとは侮れん!!
 後残りは十個。
 絶対にぜ〜〜〜ったいに巻き込まれて全治一ヶ月。
 否。
 二ヶ月でも問題ない!!
 その間エドが私の手元に戻ってくる。
 私の可愛い息子・エドが!!
 
 想像するだけで高笑いが止まらないキングはある意味・・・・・・怖かった。
 何故キングがこのようなことをしたのかというと理由があった。

 それは。

 結婚してからまったくと言っていい程、実家に近寄らないエドワードにキングは一抹の寂しさを感じていたのだ。
 アルフォンスは今医大で勉学に励んでおり、キングの相手は全く(というわけではないが)してくれない。
 リザはそんなキングを慰めつつも、今日中に処理しきれなかった書類をデスクの上に積み上げて説教とともに笑顔で仕事をさせる。

 はぁ〜〜〜寂しい〜〜〜。

 高らかに笑っていたキングはなりを潜め、盛大な溜息とともに哀愁の空気を纏わせた。





 その頃、執務室に辿りついたロイとエドワードはドアを開けようとした途端。


 チュッドーーーーーーン!!


 またもやトラップにはまってしまった。
 二人とも無傷ではあるが・・・・。

「あ〜〜〜!書類が!!」

 見晴らしが良くなった執務室から燃えた書類が風とともに外へ飛ばされていく。
 エドワードが慌ててそれらを防ごうとするが無駄な足掻きだろう。

「エディ、いいよ。また書き直すから」
「書き直すってどれだけの書類だと思っているんだよ!!」
「えっとこれぐらいかね」

 両手で大体の感覚を開けて言えばエドワードはその倍の感覚を開けた。

「そんなわけねーだろ!もう怒った!!今から犯人を捕まえてくる」
「捕まえても書類は戻ってこないよ」
「だとしてもボコらないと気がすまねーんだよ!!」

 怒りを露にするエドワードを横目にロイは再度チョークを取り出し床に錬成陣を描き発動させた。
 無残な執務室は何事も無かったかのように元に戻る。

「ん〜〜〜でもね。そろそろ犯人が捕まる頃だと思うんだけど」
「へ?」

 ロイの言葉にエドワードは怪訝な顔を見せた。

「どういう意味?」
「そのうち分るよ」

 笑顔ではぐらかされたロイにエドワードは納得がいかないといわんばかりに執務室のドアを閉め再度口を開いた。

 その二人をまたもや物陰から見つめていたキングは哀愁と涙を流していた。

「ああ〜〜〜エド〜〜〜」
「エド、じゃありません!」

 突然襟首を掴まれヒョイと簡単に持ち上げられた。
 キングの目の前にいるのは。

「リザ!」
「あなた、ここは職場ですよ」

 盛大な溜息とともに冷気を全身に纏わりつかせながらキングを見据えるリザは・・・・怖かった。

「そ、そうだな」
「では何故このような爆発が相次いでいるのかしら?」
「そ、それは」
「それは?」
「・・・・・・」

 顔に滝汗を流しながら言葉を紡げないキングにリザは踵を返した。
 もちろん片手にはキングを掴んだままで。
 カッカッカッ、と規則正しい靴の音とともに向かった先は大総統の執務室。
 勢い良くドアを開けるとともにキングを放り込む。

「あなたのお気持ちはわかります。ですが」

 ジリッとキングに詰め寄って。

「公私混合はしないでください。エドに相手をして欲しかったらこんな姑息なまねをしないで口でいいなさい」

 りっぱな口があるでしょう、と言うリザにキングは「おお!」と両手を合わせた。

「そうか。言えば良かったのか」

 納得したといわんばかりに高笑いするキングにリザは頭を抱えた。

「あなた・・・・」

 本当に息子のことになると先がみえないのだから・・・・・・国の先ゆきが不安だわ。

 こうして爆破事件は幕を閉じた。
 残りのトラップはリザの命を受けたヒューズとハボックに回収され、平和が戻った。


 矢先。


「キング義父さんの馬鹿!!!」

 全てを知ったエドワードは涙目でキングを怒鳴りつけ、当分相手にされなかったとか・・・・。

 そして。

 当のキングはその悲しみを婿にぶつけたとか・・・・。


 本日も中央司令部並びに大総統府は平和である。





   - 終 -



   04/05/04UP








ああ〜書けば書くほどキングが可笑しくなっていく〜〜〜(;;)
ごめんなさい(><;)
本当はもっとカッコイイのよ!!キングは!!!
もうそれはすっごくリザが惚れ惚れするぐらいに!!
ってことで今度はそんなキングを書きます!